2008年10月11日土曜日

竹森 俊平 「資本主義は嫌いですか」 日本経済新聞出版社

サブプライム危機の発生メカニズムを描いた本。かなりふざけた表紙だし、題名「資本主義は嫌いですか」、副題「それでもマネーは世界を動かす」とあって、とても軽い本かと思って手に取ったんですが、内容的にはかなり高度です。

筆者は慶応の教授で、「1997年―世界を変えた金融危機」という朝日新書の著書等があります。その本も、新書の割になかなか高度な内容だったんですが、内容の難しさは今回の本の方が上でしょうか。

ですが、サブプライム危機の発生メカニズムは、僕が読んだ本や雑誌の中で、これが一番わかりやすいです。「リスク」と「不確実性」という概念は別物であること、計算可能な「リスク」から計算不能の「不確実性」の領域まで踏み込まなければ企業が莫大な利潤を得ることはできないこと。金融業界は本来「不確実性」の領域の問題であるはずのことを、金融工学によって「リスク」へと変化させたこと、しかしいくら金融工学を使っても、結局それは計算不可能な「不確実性」の問題に過ぎなかったこと・・・。

リーマン・ブラザーズが経営破綻した際に、日経新聞は破綻理由を「仕入れたローン債権を証券化して売却しようとしているのに、証券の内容についての不安が高まり、それが売れなくなったため、過剰在庫を抱えてしまった」と書いていた(多分・・・)のですが、そのさらに奥にある、「なぜ証券の内容についての不安が高まったのか」ということを説明してくれます。

さらにこの本の面白いのが、第二部。サブプライム危機がこれだけ拡大するだいぶ前から、これからどのようなことが起きうるかを、学会の皆さんはかなり正確に予測していたことがわかります。

投資をしている人(私も今回の株価大暴落で損失を被った者の一人ですが・・・)は、経済動向に加えて、学会での議論にも注目しておくべきであるということがよくわかりました(笑)。

難しいけどためになるということで、星四つ。


【☆☆☆☆★】

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