2008年10月1日水曜日

村田 渉、山野目 章夫編 「要件事実論30講」 弘文堂

司法修習生や法科大学院生の定番となっている、要件事実の本。

従来の司法試験の合格者にとっては、要件事実論は合格後に司法研修所で学ぶものでした。ですが今では、要件事実論は法科大学院で基礎を学び、また新司法試験の出題範囲にもなっています。

その法科大学院での要件事実論の講義ですが、「問題研究 要件事実」と「紛争類型別の要件事実」という、どちらも司法研修所が編集したもので、外部向けにも法曹会から出版されている本が、教科書として使われているようです。

要件事実論を学ぶに当たって、これら二冊の教科書は非常に役立ちます。研修所の二回試験もこの二冊を完全にマスターしていれば、とくに問題は無いはずです。しかし、これら二冊では、なかなか具体例が掴めないのも事実だと思います。「問題研究 要件事実」はごく初歩的な本であってこれ一冊では要件事実論の学習に不十分だし、「紛争類型別の要件事実」は具体的事例が少ないので、イメージが掴みにくいのです。

そこで出てくるのが、この本「要件事実論30講」です。設題形式になっているので具体例が掴みやすいのが特徴です。読み物として使うのも良いですが、演習本としても使えます。内容も、基本的に研修所で教えるスタンダードな要件事実論となっています。「紛争類型別」とほぼ同じ内容を、よりわかりやすく丁寧に解説している、と言えるでしょうか。要件事実の初学者はとりあえずこの本を読んでみると良いでしょう。

ただ個人的には、この本は細かな部分で詰め切れていない気がします。例えば不法行為の要件事実なんてあえて章立てして論ずる必要があるのか・・・などと思ってしまいます。

この本が良くできた本であることは事実なので、星四つ。


【☆☆☆☆★】

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