朝日新聞編集委員の著者による,医療過誤事件のルポタージュ。大きく報道された事件を中心に,主に患者側に対する取材を通して書かれた書籍で,かなりの力作です。字が大きく内容も薄い新書が多い中,400ページ程度と,新書としてはかなりの厚さがあり,内容的にも十分満足できる本でした。
最初の三分の一は,明らかに「事故」ではなく「事件」と呼ぶべき,悪質なケースについてのルポです。この部分を読むと,なんてずさんな医者が多いのか,と思わざるを得ません。
しかし,この本の残りの三分の二を読み,また医療過誤事件を扱った経験,身の回りの医療従事者から聞いた話,さらに最近良くやっている医療現場の崩壊を扱ったドキュメンタリーなどから得たことを考慮すれば,世の中の殆どの医者はとても頑張っていることがわかります。
本来は弁護士等どのような職業でも存在するヒューマン・エラーが,結果として人間の生死に関係してくるという医療という職業の性格上,重大な結果をもたらしてしまうことが多く,それが医療過誤としてクローズアップされているに過ぎないのです。
そうは言っても,ミスがあったとしてもそれが生死に結びつくことの少ない弁護士業務に対し,ミスがあれば人の命を奪うこともある医療は,ミスをシステム的に減らすべく,多大な努力していかなければなりません。この本は,本来日のあたることの無い,医療業界のそのような努力にも触れられています。
弁護士として医療過誤事件を扱っていると,病院やそこで働く医療従事者に対する責任の追及をどのような形ですべきなのか考えさせられることは多いです。またミスに対する責任追及という弁護士の仕事は,ミスを予防することには殆ど役立っていないのではないかということも度々考えさせられます。
この本は,そのような思考の一助となる,良い作品でした。星五つ。
最初の三分の一は,明らかに「事故」ではなく「事件」と呼ぶべき,悪質なケースについてのルポです。この部分を読むと,なんてずさんな医者が多いのか,と思わざるを得ません。
しかし,この本の残りの三分の二を読み,また医療過誤事件を扱った経験,身の回りの医療従事者から聞いた話,さらに最近良くやっている医療現場の崩壊を扱ったドキュメンタリーなどから得たことを考慮すれば,世の中の殆どの医者はとても頑張っていることがわかります。
本来は弁護士等どのような職業でも存在するヒューマン・エラーが,結果として人間の生死に関係してくるという医療という職業の性格上,重大な結果をもたらしてしまうことが多く,それが医療過誤としてクローズアップされているに過ぎないのです。
そうは言っても,ミスがあったとしてもそれが生死に結びつくことの少ない弁護士業務に対し,ミスがあれば人の命を奪うこともある医療は,ミスをシステム的に減らすべく,多大な努力していかなければなりません。この本は,本来日のあたることの無い,医療業界のそのような努力にも触れられています。
弁護士として医療過誤事件を扱っていると,病院やそこで働く医療従事者に対する責任の追及をどのような形ですべきなのか考えさせられることは多いです。またミスに対する責任追及という弁護士の仕事は,ミスを予防することには殆ど役立っていないのではないかということも度々考えさせられます。
この本は,そのような思考の一助となる,良い作品でした。星五つ。
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