2009年3月22日日曜日

篠田 博之 「ドキュメント 死刑囚」 ちくま新書

雑誌「創」編集長の著者が書いた、死刑囚についてのレポート。既に死刑に処せられた宮崎勤元死刑囚と宅間守死刑囚との多年にわたるやり取りを元に、日本における死刑囚の実態を報告しています。

筆者は雑誌「創」の取材と通して二人の元死刑囚と関わりを持つようになり(もしかすると逆に、筆者と元死刑囚の関わりが、逆に「創」の記事となっていったのかもしれませんが・・・)、頻繁な手紙のやり取りを通して、彼らがどういう人間であったのか、ということを明らかにしようと試みます。

私がこの本を読んで感じたのは、著者の意図するところかどうかはともかく、死刑囚となるような人(世間一般には到底認容できない、重大な犯罪を犯す人)はやはり、一般的に理解しうる思考をもつ人ではない、ということです。

ただそう考えると、世間一般から理解し得ない思考をもつ人を、世間一般の基準に照らしつつ、法で裁くということになりかねません。あちら側のルールしか持たない人を、こちら側のルールで裁いているのです。それは許されるのか?

死刑という刑は、あちら側のルールしか持たない人を矯正してこちら側のルールに近づける、という努力を放棄して、こちら側から排除する刑です。市民感情からすれば、それは許容できる(望ましい、とまで言えるかもしれません)にしても、文明社会がそれを行ってしまっても良いのでしょうか。私にはわかりません。

まだ死刑制度を存続すべきか否か、確固たる自分の意見が無い私にとっては、色々な事を考えさせてくれる(結論には遠のいた気がしますが・・・)本でした。星三つ。



【☆☆☆★★】

0 件のコメント: